二月十四日






「なあ、チョコとかない?」

 甘さが欲しいのかと思った。
 スポーツのあと、甘さが欲しくなることは少な
くない。さっき、この人は無味の飲み物、水を飲
んだだけで糖分を取っていない。

「チョコ?」

 私は、スポーツバッグの中を探った。何カ月か
前に行われた合宿でマネージャー達のみの菓子交
換をした。そして貰ったものは全部ここへ放り込
んだはず。チョコレートはあっただろうか。賞味
期限は過ぎていないだろうか。そんなことが頭を
通過した。通過した、だ。すぐに頭の中から消え
去っていった。

「あった」

バッグの小さなポケットの中に、四角のものが
あった。取り出してみると金色の紙に包まれてい
る、チョコレート。

「はい」

 この人の手は大きい。私の手に乗っかっていた
チョコは、食べ応えのありそうな大きさに見えた。
でも、この人の手に乗っかると、小さな小さなす
ぐに溶けてしまいそうなチョコに変身した。
 もう一つないだろうか。またバッグの中をかき
回した。
 彼はサンキュと、ひとこと言い、包みを開けた。
金色が電灯に照らされきらりと光る。

「ん、うまい」

 これは、二月十四日の出来事。
















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公開日  2007.2.14
修正日  2007.11.3